2026年09月01日

【溶剤塗装】塗料の違いに関して


溶剤塗料にはどんな種類がある?

アクリル・ウレタン・エポキシなどの違いを分かりやすく解説

「塗料」と一言でいっても、実はさまざまな種類があります。

金属塗装で使用される溶剤塗料だけを見ても、アクリル、ウレタン、エポキシ、メラミン、フタル酸など、その種類はさまざまです。

では、これらは何が違うのでしょうか。

塗料メーカーによる違いと思われることもありますが、アクリルやウレタンという名称は、基本的には塗料に使用されている「樹脂の種類」を表しています。

樹脂の種類が変わることで、

  • 屋外に強い
  • サビに強い
  • 薬品に強い
  • キズが付きにくい
  • 焼付乾燥が必要
  • 常温で乾燥できる

など、塗膜の性質が変わります。

今回は、金属塗装でよく使用される溶剤塗料について、それぞれの特徴をできるだけ分かりやすくご紹介します。


そもそも「溶剤塗料」とは?

溶剤塗料とは、塗料の樹脂や顔料などを有機溶剤、いわゆるシンナーなどで溶かした液体塗料です。

塗装後に溶剤が揮発し、その後、塗料の種類によって化学反応や加熱による硬化が進み、最終的な塗膜になります。

現在の工業塗装では、大きく分けると、

「溶剤塗料」
「水性塗料」
「粉体塗料」

などがあります。

今回はその中でも、金属製品に広く使われている「溶剤塗料」に絞って説明します。


まず知っておきたい「塗料の種類」と「乾燥方法」は別の話

塗料を理解するときに少し分かりにくいのが、

「アクリルだから焼付塗料」
「ウレタンだから自然乾燥」

というように、樹脂の種類だけで乾燥方法が決まるわけではないことです。

例えばウレタン塗料にも常温で硬化するタイプと焼付タイプがあります。

アクリル塗料にも、常温乾燥するタイプと、130~160℃程度で焼き付けて硬化させる熱硬化タイプがあります。

そのため、塗料を見るときには、

「何の樹脂なのか」

「どのように硬化させる塗料なのか」

を分けて考えると分かりやすくなります。


主な溶剤塗料を比較すると

種類 主な特徴 焼付 屋外用途 主な用途
フタル酸・アルキド 安価で扱いやすい 基本不要 △~○ 一般機械、屋内製品
ラッカー・1液アクリル 速乾性が高い 基本不要 △~○ 小物、補修、短納期品
ウレタン 外観・耐候性のバランスが良い 通常不要※ 屋外製品、機械、車両部品
エポキシ 密着・防錆・耐薬品性に優れる 通常不要※ 下塗り、工業設備
メラミン 硬く美しい塗膜を作りやすい 必要 工業製品、量産品
熱硬化アクリル 外観・硬度・耐候性に優れる 必要 金属製品、外装部材
フッ素 非常に高い耐候性 製品による ◎◎ 建材、長期屋外用途

※ウレタンやエポキシにも焼付タイプは存在します。

では、それぞれ詳しく見ていきます。


1.フタル酸・アルキド樹脂塗料

昔から工業塗装で広く使われている、比較的スタンダードな塗料です。

一液タイプが多く、硬化剤を混ぜずに使用できるため、扱いやすいことが特徴です。

メリット

・比較的価格が安い
・一液で扱いやすい
・塗装作業がしやすい
・一般的な金属製品に使用しやすい

デメリット

・ウレタンなどと比較すると耐候性が劣る
・耐薬品性や耐久性は高性能塗料ほど高くない
・長期間屋外で使用する製品には不向きな場合がある

焼付は必要?

基本的には常温乾燥が可能です。

ただし、アルキド樹脂にメラミン樹脂を組み合わせた「アルキドメラミン塗料」になると、焼付塗料になります。

向いているもの

屋内で使用する機械、架台、設備部品など、極端に高い耐候性を必要としない製品に適しています。


2.ラッカー・1液アクリル塗料

最大の特徴は「乾燥が速い」ことです。

塗装後に溶剤が揮発することで比較的短時間で乾燥するため、短納期の製品や小物製品などに使用されることがあります。

メリット

・乾燥が速い
・作業性が良い
・一液なので扱いやすい
・補修塗装にも使いやすい

デメリット

・二液ウレタンなどと比較すると耐久性が低い
・耐薬品性が高くない
・用途によっては傷が付きやすい

焼付は必要?

基本的には必要ありません。

常温で乾燥させることができます。

向いているもの

小型部品、屋内製品、補修品など、耐久性よりも作業性や速乾性を重視する用途に向いています。


3.ウレタン塗料

現在、金属塗装でも非常によく使用される塗料の一つです。

特に「アクリルウレタン」と呼ばれる二液型塗料は、外観、耐候性、耐久性のバランスに優れています。

主剤と硬化剤を混ぜることで化学反応を起こし、強い塗膜を形成します。

メリット

・屋外での耐候性が高い
・光沢感など外観が良い
・耐久性が高い
・比較的柔軟性があり、割れにくい
・幅広い金属製品に使用できる

デメリット

・二液タイプは主剤と硬化剤を正確に混ぜる必要がある
・混合後に使用できる時間が決まっている
・一液塗料と比較すると材料費や管理コストが高くなりやすい

焼付は必要?

一般的な二液ウレタン塗料であれば、基本的には焼付不要です。

常温でも硬化します。

ただし、工業用塗料にはウレタン系の焼付塗料も存在しますので、「ウレタン=すべて常温乾燥」ではありません。

向いているもの

屋外機器、車両部品、産業機械、設備、建築金物など、外観と耐久性の両方を求められる製品に適しています。


4.エポキシ塗料

エポキシ塗料は、特に「密着性」「防錆性」「耐薬品性」に優れた塗料です。

その特徴から、仕上げ塗料というよりも「下塗り塗料」として使用されることが多い塗料でもあります。

メリット

・金属への密着性が高い
・防錆性能が高い
・耐薬品性に優れる
・硬く丈夫な塗膜を形成できる

デメリット

・紫外線の影響を受けやすい
・屋外で上塗りとして長期間使用すると、変色やチョーキングなどが発生しやすい
・二液型の場合は混合管理が必要

焼付は必要?

二液エポキシであれば、常温硬化タイプが一般的です。

一方で、工業用塗料には焼付型のエポキシ系塗料も存在します。

向いているもの

鉄製品の防錆下塗り、工場設備、産業機械、薬品を使用する設備などに適しています。

例えば、

「エポキシ系下塗り+ウレタン上塗り」

という組み合わせにすることで、エポキシの防錆性能とウレタンの耐候性を両立させることもできます。


5.メラミン焼付塗料

工業塗装では非常に馴染みのある焼付塗料です。

一般的にはアルキド樹脂やアクリル樹脂などにメラミン樹脂を組み合わせ、加熱することで化学反応を起こして塗膜を硬化させます。

メリット

・硬い塗膜を作りやすい
・表面がきれいに仕上がりやすい
・量産塗装との相性が良い
・塗装後短時間で硬化させることができる

デメリット

・乾燥炉が必要
・大型製品では炉の大きさに制限される
・熱に弱い部品が付いている製品には使用できない場合がある

焼付は必要?

基本的に必要です。

製品によって異なりますが、おおよそ110~160℃前後の温度域で焼き付ける工業用塗料が多くあります。

重要なのは「炉内の温度」ではなく、塗装された製品そのものが規定温度に達していることです。

向いているもの

照明器具、電気機器、金属家具、機械カバーなど、工場で連続的に生産される金属製品に適しています。


6.熱硬化アクリル塗料

「アクリル塗料」という名前だけを見ると常温乾燥塗料をイメージする方もいますが、工業塗装では焼付型のアクリル塗料も多く使用されています。

熱を加えることで硬化させるため、「熱硬化アクリル」と呼ばれます。

メリット

・耐候性が高い
・色や光沢を維持しやすい
・硬い塗膜を形成できる
・外観がきれい

デメリット

・焼付設備が必要
・常温乾燥塗料より工程設備が必要
・熱に弱い製品には使用できない

焼付は必要?

熱硬化アクリルの場合は必要です。

製品によりますが、130~160℃程度で焼付するものが多く使用されています。

向いているもの

屋外で使用する金属製品、外装部材、照明器具、電気機器など、外観と耐候性を求める製品に適しています。


7.フッ素塗料

耐候性を非常に重視する場合に使用される高性能塗料です。

紫外線や雨風に強く、長期間屋外で使用する製品に向いています。

メリット

・非常に高い耐候性
・色や光沢を長期間維持しやすい
・耐薬品性にも優れる
・長期使用を前提とした製品に適している

デメリット

・材料価格が高い
・一般的な工業製品ではオーバースペックになる場合がある
・塗装仕様や下地処理の管理も重要

焼付は必要?

製品によります。

常温硬化するタイプもあれば、金属建材などに使用される焼付型のフッ素塗料もあります。

焼付型では160℃前後、さらに高温で焼付するタイプなどもあります。

向いているもの

建築外装、屋外設備、高耐候性が要求される金属製品などに使用されます。


「一液」「二液」「焼付」の違いも知っておくと分かりやすい

塗料の種類とは別に、硬化方法によって大きく3つに分けて考えることもできます。

一液型

塗料をそのまま使用するタイプです。

硬化剤を混ぜる必要がないため、扱いやすいことが特徴です。

二液型

主剤と硬化剤を塗装前に混ぜるタイプです。

ウレタンやエポキシなどで多く使用されています。

強い塗膜を作ることができますが、混合比率や混合後の使用時間を管理する必要があります。

焼付型

塗装後に乾燥炉へ入れ、熱を加えることで硬化させます。

短時間で安定した塗膜を作りやすいため、工場で生産される金属製品との相性が良い方法です。


結局、どの塗料が一番良いの?

ここまで読むと、

「耐久性が高い塗料を選べばいいのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、実際の塗装では「一番性能の高い塗料」が「一番良い塗料」とは限りません。

例えば屋内で使用する部品に非常に高価なフッ素塗料を使用しても、その性能を十分に活かせない可能性があります。

反対に、長期間屋外で使用する製品に、耐候性の低い塗料を使用すると早期に劣化する可能性があります。

塗料選びで重要なのは、

「どこで使うのか」
「何年間使用するのか」
「どの程度の外観が必要なのか」
「薬品や水に触れるのか」
「焼付できる製品なのか」
「どの程度のコストをかけるのか」

といった条件です。

つまり、塗料は性能だけでなく「用途とのバランス」で選ぶことが重要です。


まとめ

溶剤塗料にはさまざまな種類がありますが、大まかに整理すると、

コストや扱いやすさを重視するならフタル酸・アルキド系

速乾性を重視するならラッカー・1液アクリル系

屋外耐久性と外観のバランスならウレタン系

防錆・密着・耐薬品性ならエポキシ系

工業製品の焼付塗装ならメラミン系や熱硬化アクリル系

長期間の屋外耐候性を求めるならフッ素系

というのが一つの目安になります。

ただし、同じ「アクリル」「ウレタン」「エポキシ」という名前でも、配合や硬化方式によって性能は大きく変わります。

そのため、実際の製品では「塗料の名前だけ」で判断するのではなく、使用環境や素材、必要とされる耐久性まで含めて塗装仕様を決めることが大切です。

塗装について、

「今使っている塗料が適切なのか分からない」

「屋外で使うので、もう少し耐久性を上げたい」

「焼付塗装と常温乾燥のどちらが良いのか分からない」

といった場合には、製品の使用環境から塗料を検討することで、過剰品質や性能不足を防ぐことができます。